4月9日、903シティファーム平成29年度始動企画として、従業員が〝活き活き″と働く旅館、「湯河原リトリート ご縁の杜 – Goen no Mori –」にて、ワークショップを開催した。同ワークショップ内にて、講師として、同旅館女将である深澤里奈子氏にご講話いただいた。

深澤氏は、若干26歳で同旅館の経営者として女将の役割を担った。深澤氏は、経営者駆け出し当初の経営の視点と、現在の「湯河原リトリート ご縁の杜 – Goen no Mori –」の経営理念の違いについて振り返る。

女将として旅館業を営み始めすぐに「理念経営」が大事であることに気づいた、と深澤氏は語る。しかし、当初深澤氏の頭にあった理念経営は、会社の理念として描いたものを従業員に浸透させる「コントロールのための理念」経営であった。そのコントロールするための理念がすぐに絵に描いた餅となり、実現に向けた活動を行っても必ず不具合が生じる、といったことに頭を悩ませる日々が続いた。そのようなtry&errorを繰り返し、深澤氏はあることを悟ったという。

「会社とは、一人一人の人生が集まった場所であること」「その上で、会社の役割は、各々のVision、Missionに対しての学びの場であること」、そのための「理念」である、と。

そのような視点で、2008年から自身の理念経営を練り直し、「従業員個々の自己承認力」「従業員同士の他人承認力」を高めるワークを旅館運営の中で実践。ミーティングは生産目標などの数字を出し合う場ではなく、従業員の自己確信を作り出すワークショップの場となっていった。確かな自己確信をもった従業員が自然体でサービスを提供することで、宿泊に来たお客様にとっても学びの場となる。その場その場でお客様の機嫌を取るサービスではなく、客と向き合い、共に成長する姿勢で向き合えば、関わったお客様を変えるのだと力説した。

これは、お客様も巻き込んで女将、従業員が寄り集まって形作られたダイバーシティ経営の一つの完成形なのかもしれない。

このような強い意志力を持った者たちの調和(ダイバーシティ)は、旅館デザインにも現れている。

同旅館の温泉に入口には、男湯・女湯のそれぞれの案内札が立てかけられている。しかしその立て札実は元は一つの木の板から出来上がっているという。「男性々と女性々、陰と陽の相反するものが、調和をもって存在する、そのバランスが重要です。その2つが過不足なく一つに融和している(中庸)その時点で最大のエネルギーを発するのです。」、と女将は語る。女将の持つあるべきダイバーシティ経営の形が体現された仕掛けだ。

また、同旅館では、ビジネスの世界でも昨今重要視されている「マインドフルネス」にも取り組んでいる。深澤氏自身、理念経営の在り方を変えた2008年以降、「自身の在り方」について深く考えたという。深澤氏曰く「在りたい自分を強くイメージできていたら、その通りになっていくものなんですね」逆に、「在りたい自分がイメージできないうちはきっとなにもできないものなんですね」。これは深澤氏の旅館営業、スタッフ教育への教育指導、そして、現在のご縁の杜の在り方に強く根付いている。

「在りたい自分」を強くイメージするためには、気持ちをフラットな状態に維持する必要がある。しかし、精神を意図的に「マインドフル」な状態にすることは、実は非常に困難なことだ。

我々は、深澤氏の導きのもと、30分もの間、日ごろの生活そして当日のワークショップの熱量から解き放たれる「マインドフルネス」に誘われた。

このような「マインドフルネス」により、「在りたい自分」を獲得する。深澤氏は、一時期東洋医学にも興味を持ち、呼吸を正し、「手当て」によって体を労り、身体的・精神的にフラットな状態にする。その先に、「在りたい自分」を描くための「マインドフルネス」な状態があるのだ。

旅館でふるまわれる料理は海外セレブにも人気のヴィーガン料理だ。

シェフ(まっしーさん)は40歳で卵・乳製品にアレルギーに。その欠点を個性にするため、ヴィーガン料理に目覚めた。「食べる人を元気にする料理を提供したい」という「在りたい自分(Vision)」をもった人間だ。

まっしーさんが考案した調理法に「重ね煮」というものがある。これは、野菜を段々に重ね合わせ、様々な野菜の重なり合いが自然体で調和し仕上がるという画期的調理法だ。「野菜をそのまま使って構わない」「しかし、すべてごった煮に配置してもいいものにはならない」。まっしーさん曰く、下から生えるものを下に、上から生えるものを上に、そういった自然的な配置が一番おいしい味を引き出す。まっしーさんはそれを実食に実食を重ね体験している。これは、ダイバーシティ経営の在り様そのものを表わしているといえるのではないだろうか。

女将が見出した新しい「理念経営」と「在りたい自分」に対する意識が生み出した、多様な人材のコラボレーションが織りなす確かな味が、口の中にしみわたっていくのを感じた。

そのような「傍(はた)楽(らき)方」の在り様を深々と感じながら、もてなされる料理に舌鼓を打っていると不意に壁に模造紙が張り出す女性従業員の姿が。

この方はグラフィックデザイナーの原田さん。

以前は、東京で働きに出ていたのだが、東京での働き方が「自分の在り方」に合わず、「在りたい自分」の形を求めて、このご縁の杜へ。今は、旅館業を営みながらこのような自身の特技を活かし、各地でセミナーの運営のお手伝いに(ときには以前働いていた東京にも)出ているそうだ。「在りたい自分」を強く求める原田さんが、このご縁の杜との出会いをつないでいる。

その後、903シティファームの面々は、まとめあがった模造紙のレポートを元に本日のワークの振り返り、同じ「気づき」を共有したのであった。

 

hatarakubaイベント・メディア情報一覧経営と自然の調和4月9日、903シティファーム平成29年度始動企画として、従業員が〝活き活き″と働く旅館、「湯河原リトリート ご縁の杜 - Goen no Mori –」にて、ワークショップを開催した。同ワークショップ内にて、講師として、同旅館女将である深澤里奈子氏にご講話いただいた。 深澤氏は、若干26歳で同旅館の経営者として女将の役割を担った。深澤氏は、経営者駆け出し当初の経営の視点と、現在の「湯河原リトリート ご縁の杜 - Goen no Mori –」の経営理念の違いについて振り返る。 女将として旅館業を営み始めすぐに「理念経営」が大事であることに気づいた、と深澤氏は語る。しかし、当初深澤氏の頭にあった理念経営は、会社の理念として描いたものを従業員に浸透させる「コントロールのための理念」経営であった。そのコントロールするための理念がすぐに絵に描いた餅となり、実現に向けた活動を行っても必ず不具合が生じる、といったことに頭を悩ませる日々が続いた。そのようなtry&errorを繰り返し、深澤氏はあることを悟ったという。 「会社とは、一人一人の人生が集まった場所であること」「その上で、会社の役割は、各々のVision、Missionに対しての学びの場であること」、そのための「理念」である、と。 そのような視点で、2008年から自身の理念経営を練り直し、「従業員個々の自己承認力」「従業員同士の他人承認力」を高めるワークを旅館運営の中で実践。ミーティングは生産目標などの数字を出し合う場ではなく、従業員の自己確信を作り出すワークショップの場となっていった。確かな自己確信をもった従業員が自然体でサービスを提供することで、宿泊に来たお客様にとっても学びの場となる。その場その場でお客様の機嫌を取るサービスではなく、客と向き合い、共に成長する姿勢で向き合えば、関わったお客様を変えるのだと力説した。 これは、お客様も巻き込んで女将、従業員が寄り集まって形作られたダイバーシティ経営の一つの完成形なのかもしれない。 このような強い意志力を持った者たちの調和(ダイバーシティ)は、旅館デザインにも現れている。 同旅館の温泉に入口には、男湯・女湯のそれぞれの案内札が立てかけられている。しかしその立て札実は元は一つの木の板から出来上がっているという。「男性々と女性々、陰と陽の相反するものが、調和をもって存在する、そのバランスが重要です。その2つが過不足なく一つに融和している(中庸)その時点で最大のエネルギーを発するのです。」、と女将は語る。女将の持つあるべきダイバーシティ経営の形が体現された仕掛けだ。 また、同旅館では、ビジネスの世界でも昨今重要視されている「マインドフルネス」にも取り組んでいる。深澤氏自身、理念経営の在り方を変えた2008年以降、「自身の在り方」について深く考えたという。深澤氏曰く「在りたい自分を強くイメージできていたら、その通りになっていくものなんですね」逆に、「在りたい自分がイメージできないうちはきっとなにもできないものなんですね」。これは深澤氏の旅館営業、スタッフ教育への教育指導、そして、現在のご縁の杜の在り方に強く根付いている。 「在りたい自分」を強くイメージするためには、気持ちをフラットな状態に維持する必要がある。しかし、精神を意図的に「マインドフル」な状態にすることは、実は非常に困難なことだ。 我々は、深澤氏の導きのもと、30分もの間、日ごろの生活そして当日のワークショップの熱量から解き放たれる「マインドフルネス」に誘われた。 このような「マインドフルネス」により、「在りたい自分」を獲得する。深澤氏は、一時期東洋医学にも興味を持ち、呼吸を正し、「手当て」によって体を労り、身体的・精神的にフラットな状態にする。その先に、「在りたい自分」を描くための「マインドフルネス」な状態があるのだ。 旅館でふるまわれる料理は海外セレブにも人気のヴィーガン料理だ。 シェフ(まっしーさん)は40歳で卵・乳製品にアレルギーに。その欠点を個性にするため、ヴィーガン料理に目覚めた。「食べる人を元気にする料理を提供したい」という「在りたい自分(Vision)」をもった人間だ。 まっしーさんが考案した調理法に「重ね煮」というものがある。これは、野菜を段々に重ね合わせ、様々な野菜の重なり合いが自然体で調和し仕上がるという画期的調理法だ。「野菜をそのまま使って構わない」「しかし、すべてごった煮に配置してもいいものにはならない」。まっしーさん曰く、下から生えるものを下に、上から生えるものを上に、そういった自然的な配置が一番おいしい味を引き出す。まっしーさんはそれを実食に実食を重ね体験している。これは、ダイバーシティ経営の在り様そのものを表わしているといえるのではないだろうか。 女将が見出した新しい「理念経営」と「在りたい自分」に対する意識が生み出した、多様な人材のコラボレーションが織りなす確かな味が、口の中にしみわたっていくのを感じた。 そのような「傍(はた)楽(らき)方」の在り様を深々と感じながら、もてなされる料理に舌鼓を打っていると不意に壁に模造紙が張り出す女性従業員の姿が。 この方はグラフィックデザイナーの原田さん。 以前は、東京で働きに出ていたのだが、東京での働き方が「自分の在り方」に合わず、「在りたい自分」の形を求めて、このご縁の杜へ。今は、旅館業を営みながらこのような自身の特技を活かし、各地でセミナーの運営のお手伝いに(ときには以前働いていた東京にも)出ているそうだ。「在りたい自分」を強く求める原田さんが、このご縁の杜との出会いをつないでいる。 その後、903シティファームの面々は、まとめあがった模造紙のレポートを元に本日のワークの振り返り、同じ「気づき」を共有したのであった。  下町の農と食で地域をつなぐ