「なでしこ銘柄」に2年連続で選ばれたカルビー。ジョンソン・エンド・ジョンソン社長から転進し、同社を率いる松本晃・会長兼CEOは、「ダイバーシティ(多様性)なき企業に明日は無い」と言い切る。その理由は「やらなければ会社が滅びる」と、見事なまでに明快だった。(聞き手:森 摂=オルタナ編集長、吉田広子=オルタナ副編集長、写真=高橋 慎一)

─松本さんはジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人で進めたダイバーシティ経営をカルビーに持ち込んだ際、「ダイバーシティが無ければカルビーの未来は無い」とぶちあげたそうですね。

女性活用は、本当は障がい者雇用より難しいのですよ。

─女性活用がですか。

当たり前です。ダイバーシティ経営は抵抗勢力との闘いなのです。

障がい者と言う表現は嫌い。障がい者といっても、身体のわずか一部に障がいがあるだけ。根本的なところに何の障がいもありません。世の中には、外からは見えなくても、根本的なところに障がいがある人がいっぱいいます。

─抵抗勢力とは男性社員ということですね。

男性というよりも、日本人の男性であり、年長者です。彼らの限られたポジションを奪いかねないから、当然、抵抗勢力が出てきます。本当に女性活用が進むか、進まないか、これからの10年くらいが勝負です。ただし、はっきりしていることは、やらなかったら会社がダメになるということ。簡単なことです。

─「ダイバーシティ経営をやらなかったら会社がダメになる、やれば良くなる」という仕組みを分からない人に教えるには、どうすれば良いでしょうか。

最も分かりやすい例は、読売ジャイアンツでしょう。V9時代のジャイアンツは純血主義で、外国人選手を入れなかった。当時は日本人だけで勝っていた。ところが今はそうはいきません。

米国のメジャーリーガーにはいろんな人がいる。日本人だって入れる。韓国人も中国人もメキシコ人もプレーできる。そういう時代なのです。それに反対する人はすればいい。うまくいかないだけ。

大相撲もおそらくあと1年以内に横綱4人が全部モンゴル人になるだろう。30年前だったら日本人に相当抵抗があっただろうが、今はありません。時代はどんどん変わっているのです。

今は限られた資源を奪い合う時代だから、変わらざるを得ない。勝とうと思えば、ダイバーシティは当たり前。嫌いでいたって構わない。企業が滅びていくだけのことです。

■まずはトップが宣言する

─カルビーに来て、ダイバーシティを掲げて、この会社にも抵抗勢力は出たのですか。

どこの会社にもあるのですよ。当たり前のことです。不思議でも何でもない。既得権を奪われそうになったら誰だって反対する。そこでダイバーシティは嫌いだと言って、会社を辞めるなら辞めたらいい。日本ではダイバーシティが嫌いな会社はたくさんあるのだから、そっちにいけばいい。

─日本で8割方の会社では、まだそういう状況でしょう。

しかし、世界の多くの国では、ダイバーシティは嫌いだと言っていたら、いる場所が無くなる。自分はそこで勝っていかなければいけない。女性とか外国人とか若い人と戦っていかないといけないということが分かれば切磋琢磨する。議論している暇なんかない。

─統計では、日本の全上場企業の役員に占める女性の割合は約1%です。

こんなことを社会的に議論していることが異常なのです。そういうことがあまりにも分かっていない経営者が多すぎる。そして日本も遅すぎる。

多くの大企業経営者は、いまやカッコ悪いから反対する人はいない。しかし、どれだけの経営者が本気でやっているのか分かりません。

─仮の話ですが、また別のダイバーシティが進んでいない会社に移られて、社風を変えなければいけないという時には、まずどこから手を打ちますか。

まず、経営者として宣言します。「嫌なら辞めろ」と言います。カルビーでも最初は割とおとなしく言っていました。少しずつ浸透してきたので最近は結構はっきり言っている。ダイバーシティの嫌いな人、嫌いな会社はいくらでもある。そこへ行ったらどうですかと。絶対に止めません。

─まずトップが宣言することが大事ですね。

何でもかんでも力づくで命令しているわけではないです。私がこの会社に来て我慢していることもたくさんありますから(笑)。

我慢しないことは2つだけ。一つはダイバーシティ、もう一つは社会貢献(CSR活動)。この2つだけは絶対に妥協しません。

提携企業:オルタナ http://www.alterna.co.jp/15362 2015年6月29日掲載

https://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/13-1.jpghttps://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/13-1-150x150.jpghatarakubaオルタナ提携記事進化する組織「なでしこ銘柄」に2年連続で選ばれたカルビー。ジョンソン・エンド・ジョンソン社長から転進し、同社を率いる松本晃・会長兼CEOは、「ダイバーシティ(多様性)なき企業に明日は無い」と言い切る。その理由は「やらなければ会社が滅びる」と、見事なまでに明快だった。(聞き手:森 摂=オルタナ編集長、吉田広子=オルタナ副編集長、写真=高橋 慎一) ─松本さんはジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人で進めたダイバーシティ経営をカルビーに持ち込んだ際、「ダイバーシティが無ければカルビーの未来は無い」とぶちあげたそうですね。 女性活用は、本当は障がい者雇用より難しいのですよ。 ─女性活用がですか。 当たり前です。ダイバーシティ経営は抵抗勢力との闘いなのです。 障がい者と言う表現は嫌い。障がい者といっても、身体のわずか一部に障がいがあるだけ。根本的なところに何の障がいもありません。世の中には、外からは見えなくても、根本的なところに障がいがある人がいっぱいいます。 ─抵抗勢力とは男性社員ということですね。 男性というよりも、日本人の男性であり、年長者です。彼らの限られたポジションを奪いかねないから、当然、抵抗勢力が出てきます。本当に女性活用が進むか、進まないか、これからの10年くらいが勝負です。ただし、はっきりしていることは、やらなかったら会社がダメになるということ。簡単なことです。 ─「ダイバーシティ経営をやらなかったら会社がダメになる、やれば良くなる」という仕組みを分からない人に教えるには、どうすれば良いでしょうか。 最も分かりやすい例は、読売ジャイアンツでしょう。V9時代のジャイアンツは純血主義で、外国人選手を入れなかった。当時は日本人だけで勝っていた。ところが今はそうはいきません。 米国のメジャーリーガーにはいろんな人がいる。日本人だって入れる。韓国人も中国人もメキシコ人もプレーできる。そういう時代なのです。それに反対する人はすればいい。うまくいかないだけ。 大相撲もおそらくあと1年以内に横綱4人が全部モンゴル人になるだろう。30年前だったら日本人に相当抵抗があっただろうが、今はありません。時代はどんどん変わっているのです。 今は限られた資源を奪い合う時代だから、変わらざるを得ない。勝とうと思えば、ダイバーシティは当たり前。嫌いでいたって構わない。企業が滅びていくだけのことです。 ■まずはトップが宣言する ─カルビーに来て、ダイバーシティを掲げて、この会社にも抵抗勢力は出たのですか。 どこの会社にもあるのですよ。当たり前のことです。不思議でも何でもない。既得権を奪われそうになったら誰だって反対する。そこでダイバーシティは嫌いだと言って、会社を辞めるなら辞めたらいい。日本ではダイバーシティが嫌いな会社はたくさんあるのだから、そっちにいけばいい。 ─日本で8割方の会社では、まだそういう状況でしょう。 しかし、世界の多くの国では、ダイバーシティは嫌いだと言っていたら、いる場所が無くなる。自分はそこで勝っていかなければいけない。女性とか外国人とか若い人と戦っていかないといけないということが分かれば切磋琢磨する。議論している暇なんかない。 ─統計では、日本の全上場企業の役員に占める女性の割合は約1%です。 こんなことを社会的に議論していることが異常なのです。そういうことがあまりにも分かっていない経営者が多すぎる。そして日本も遅すぎる。 多くの大企業経営者は、いまやカッコ悪いから反対する人はいない。しかし、どれだけの経営者が本気でやっているのか分かりません。 ─仮の話ですが、また別のダイバーシティが進んでいない会社に移られて、社風を変えなければいけないという時には、まずどこから手を打ちますか。 まず、経営者として宣言します。「嫌なら辞めろ」と言います。カルビーでも最初は割とおとなしく言っていました。少しずつ浸透してきたので最近は結構はっきり言っている。ダイバーシティの嫌いな人、嫌いな会社はいくらでもある。そこへ行ったらどうですかと。絶対に止めません。 ─まずトップが宣言することが大事ですね。 何でもかんでも力づくで命令しているわけではないです。私がこの会社に来て我慢していることもたくさんありますから(笑)。 我慢しないことは2つだけ。一つはダイバーシティ、もう一つは社会貢献(CSR活動)。この2つだけは絶対に妥協しません。 提携企業:オルタナ http://www.alterna.co.jp/15362 2015年6月29日掲載下町の農と食で地域をつなぐ