5月17日「非正規社員の定着戦略化セミナー」と題したオンラインセミナーの第7回を配信しました。第7回のテーマは「非正規社員の定着のための評価制度の導入」です。今回講師として、有限会社人事労務のチーフ人事コンサルタントである畑中 義雄がお送りさせていただきました。

前回までの講義で「働き方改革」の政治動向の影響も解説させて頂きましたが、近年「多様な働き方」を求める声は大きく聞こえるようになってきている、と講師は現場の声を届けました。
近年、従来戦力としてきた正社員を従来の制度で雇おうとしても、思った時期に思った人が雇えない、という時代になっています。また、多様な働き方の要請もそうですが、AIの普及等社会の趨勢を受け、働き手に求められる仕事は複雑化し、担う役割もそれに応じて複雑なものとなってきています。
そして、「同一労働・同一賃金」の観点から、正規・非正規問わず、どのような役割を与えて働いてもらうか。雇用の在り方をしっかりと整理しないと、企業としては紛争のリスクにつながります。これらの事情を踏まえ、ダイバーシティ時代に対応した人事評価制度の構築が求められている旨提言しました。

講師の畑中は、これからの時代、「役割」によって、「責任・権限」が定まり、それに応じた「処遇」が決まる、という「役割給」を取る役割等級制度を軸とした人事評価制度を取り入れることが、非正規社員の戦力化につながる、と提案しました。「役割」に対して、正規・非正規の枠は関係ありません。設定した「役割」に応じた仕事なりを評価する。そのような人事制度が、非正規社員を戦力化し働きがいをもって仕事に励んでもらうためには必要である、と。

では、担う「役割」に対する適切な「評価」の仕方はどのようにすればよいでしょうか。講義ではまず、基本三項目(成果・発揮能力・執務態度)と付加的な要素としてバリュー評価、チーム評価について全体像を説明させていただきました。

まず、評価についての基本三項目で、人事評価制度を実施する際に特に重要なのは成果についてです。この点、成果の評価について担った「役割」の設定し会社が期待した役割を果たせたかどうかを測る手法につき、目標管理制度・自己申告制・ノルマ設定等ご紹介させて頂きました。特に、目標管理制度は、会社が期待する役割と本人が認識している役割との間に齟齬がないか、上司と部下とのコミュニケーションツールとしても活用できます。会社によっては、非正規社員を戦力化したいが今まで正規の上司との間でコミュニケーションがあまり取れておらず、適正・適切な評価をする土壌に欠けている認識のところもあるでしょう。非正規社員の戦力化にあたり、評価手法として検討に値する会社も多いことかと思われます。
また、発揮能力について、与えられた役割に求められる行動が出来ているか(役割達成におけるプロセス評価)。会社が働き手に対して期待している役割から考えて適切な発揮項目を抽出することが必要である旨説明しました。

さらに、本人の役割を超えて企業価値を高める行動を取ったかという基準で評価するバリュー評価(付加価値目標)、属するチームの会社・地域貢献度を個人の評価にプラスするチーム評価についても説明させて頂きました。担った役割を超えた働き・成果は企業のイノベーションを推し進める貴重な貢献です。また、正規・非正規問わず一つの部署として役割を担っているのですから、同様に評価することが必要なのは冒頭に説明した通りです。この点、バリュー評価やチーム評価を非正規社員について考慮しない会社はダイバーシティ時代を生き残ることは難しい、と講師は講義中言及しました。

また、各人が担った役割に応じた項目の組み合わせ(比重)の設定が必要です。例えば、販売の売上目標を持つ短時間正社員については成果項目の比重が大きいですし、ブランド力アップの活動は大いにバリュー評価で取り上げられるべきでしょう。営業事務の短時間契約社員は求められる役割としては決められた時間しっかり業務を行って欲しいので発揮能力や執務態度を重視しますし、チームの業績は適正に付加されるべきでしょう。それぞれ、「役割」に応じて(役割等級)役割毎の評価項目の組み合わせや分配の設定が重要になります。

非正規社員の戦力化について評価の上で重要なのは以上の通りですが、評価制度の構築運用については、最初から、評価制度を精巧に作りこむことは得策ではありません。まずは構造のシンプルなものや運用の簡単なものを導入してから(例えば、目標管理制度を導入したいが期初の目標設定や面談等運用が難しい場合は、まずは発揮能力評価から、等)、徐々に評価制度の浸透を図っていき運用の素地を整えることが肝要である旨、付言させていただきました。

繰り返すようですが、今まで人事制度自体がない会社であっても、非正規社員に「決められたことだけやればいい」ではなく、多様な働き方を望む非正規社員の存在をいかに戦力化すべきかを考える時代になってきています。育児や介護等、様々な事情による勤務地・職務の制約がありそれゆえに独自のつながりやアイディアを持つ人たち、あるいは高度な専門技術を持ち、一つの企業にとどまらない人財に適切な役割を与え、適正な評価をすることは、このような非正規社員に働きやすく、かつ働きがいがある組織として認識してもらうことにつながりますし、その結果定着率の高い力強い職場を作ることにつながる、と考えます。

次回の講義の内容は、「働き方改革を推し進める上で活用できる助成金制度」です。今回の講義まで紹介させて頂いた様々な施策の実際の導入は一筋縄ではいかない会社もあるかと思います。しかし、政府としても「働き方改革」を推し進める企業を支援すべく様々な施策を設けています。この点は、有限会社人事労務の人事コンサルタント松本 健吾がダイバーシティ時代に対応するための様々な助成制度について解説させていただきます。こうご期待ください。

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https://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/第7回 視聴 画像1-1.jpghttps://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/第7回 視聴 画像1-1-150x150.jpghatarakuba最新記事進化する組織5月17日「非正規社員の定着戦略化セミナー」と題したオンラインセミナーの第7回を配信しました。第7回のテーマは「非正規社員の定着のための評価制度の導入」です。今回講師として、有限会社人事労務のチーフ人事コンサルタントである畑中 義雄がお送りさせていただきました。 前回までの講義で「働き方改革」の政治動向の影響も解説させて頂きましたが、近年「多様な働き方」を求める声は大きく聞こえるようになってきている、と講師は現場の声を届けました。 近年、従来戦力としてきた正社員を従来の制度で雇おうとしても、思った時期に思った人が雇えない、という時代になっています。また、多様な働き方の要請もそうですが、AIの普及等社会の趨勢を受け、働き手に求められる仕事は複雑化し、担う役割もそれに応じて複雑なものとなってきています。 そして、「同一労働・同一賃金」の観点から、正規・非正規問わず、どのような役割を与えて働いてもらうか。雇用の在り方をしっかりと整理しないと、企業としては紛争のリスクにつながります。これらの事情を踏まえ、ダイバーシティ時代に対応した人事評価制度の構築が求められている旨提言しました。 講師の畑中は、これからの時代、「役割」によって、「責任・権限」が定まり、それに応じた「処遇」が決まる、という「役割給」を取る役割等級制度を軸とした人事評価制度を取り入れることが、非正規社員の戦力化につながる、と提案しました。「役割」に対して、正規・非正規の枠は関係ありません。設定した「役割」に応じた仕事なりを評価する。そのような人事制度が、非正規社員を戦力化し働きがいをもって仕事に励んでもらうためには必要である、と。 では、担う「役割」に対する適切な「評価」の仕方はどのようにすればよいでしょうか。講義ではまず、基本三項目(成果・発揮能力・執務態度)と付加的な要素としてバリュー評価、チーム評価について全体像を説明させていただきました。 まず、評価についての基本三項目で、人事評価制度を実施する際に特に重要なのは成果についてです。この点、成果の評価について担った「役割」の設定し会社が期待した役割を果たせたかどうかを測る手法につき、目標管理制度・自己申告制・ノルマ設定等ご紹介させて頂きました。特に、目標管理制度は、会社が期待する役割と本人が認識している役割との間に齟齬がないか、上司と部下とのコミュニケーションツールとしても活用できます。会社によっては、非正規社員を戦力化したいが今まで正規の上司との間でコミュニケーションがあまり取れておらず、適正・適切な評価をする土壌に欠けている認識のところもあるでしょう。非正規社員の戦力化にあたり、評価手法として検討に値する会社も多いことかと思われます。 また、発揮能力について、与えられた役割に求められる行動が出来ているか(役割達成におけるプロセス評価)。会社が働き手に対して期待している役割から考えて適切な発揮項目を抽出することが必要である旨説明しました。 さらに、本人の役割を超えて企業価値を高める行動を取ったかという基準で評価するバリュー評価(付加価値目標)、属するチームの会社・地域貢献度を個人の評価にプラスするチーム評価についても説明させて頂きました。担った役割を超えた働き・成果は企業のイノベーションを推し進める貴重な貢献です。また、正規・非正規問わず一つの部署として役割を担っているのですから、同様に評価することが必要なのは冒頭に説明した通りです。この点、バリュー評価やチーム評価を非正規社員について考慮しない会社はダイバーシティ時代を生き残ることは難しい、と講師は講義中言及しました。 また、各人が担った役割に応じた項目の組み合わせ(比重)の設定が必要です。例えば、販売の売上目標を持つ短時間正社員については成果項目の比重が大きいですし、ブランド力アップの活動は大いにバリュー評価で取り上げられるべきでしょう。営業事務の短時間契約社員は求められる役割としては決められた時間しっかり業務を行って欲しいので発揮能力や執務態度を重視しますし、チームの業績は適正に付加されるべきでしょう。それぞれ、「役割」に応じて(役割等級)役割毎の評価項目の組み合わせや分配の設定が重要になります。 非正規社員の戦力化について評価の上で重要なのは以上の通りですが、評価制度の構築運用については、最初から、評価制度を精巧に作りこむことは得策ではありません。まずは構造のシンプルなものや運用の簡単なものを導入してから(例えば、目標管理制度を導入したいが期初の目標設定や面談等運用が難しい場合は、まずは発揮能力評価から、等)、徐々に評価制度の浸透を図っていき運用の素地を整えることが肝要である旨、付言させていただきました。 繰り返すようですが、今まで人事制度自体がない会社であっても、非正規社員に「決められたことだけやればいい」ではなく、多様な働き方を望む非正規社員の存在をいかに戦力化すべきかを考える時代になってきています。育児や介護等、様々な事情による勤務地・職務の制約がありそれゆえに独自のつながりやアイディアを持つ人たち、あるいは高度な専門技術を持ち、一つの企業にとどまらない人財に適切な役割を与え、適正な評価をすることは、このような非正規社員に働きやすく、かつ働きがいがある組織として認識してもらうことにつながりますし、その結果定着率の高い力強い職場を作ることにつながる、と考えます。 次回の講義の内容は、「働き方改革を推し進める上で活用できる助成金制度」です。今回の講義まで紹介させて頂いた様々な施策の実際の導入は一筋縄ではいかない会社もあるかと思います。しかし、政府としても「働き方改革」を推し進める企業を支援すべく様々な施策を設けています。この点は、有限会社人事労務の人事コンサルタント松本 健吾がダイバーシティ時代に対応するための様々な助成制度について解説させていただきます。こうご期待ください。 詳しくはこちら▼下町の農と食で地域をつなぐ