伊藤忠商事が運営する社会貢献型ギャラリー「伊藤忠青山アートスクエア」で、都立特別支援学校と組んだ展覧会を行っている。都内の44校から830点が集まり、その中から50点を展示している。障害者アートの担い手が作品を通して訴える内面の世界を感じてほしい。(オルタナS副編集長=池田 真隆)


会場には選ばれた50点が飾られている

伊藤忠青山アートスクエアで開かれているのは、「第2回 東京都立特別支援学校 アートプロジェクト展 私の色、私の形、私の輝き」。東京都教育委員会と組み、都立特別支援学校に在籍する児童・生徒から作品を応募した。応募総数は昨年の約2倍となる830点に及んだ。東京藝術大学美術学部が審査を行い、50点を展示した。

このアート作品を通して、障害者及び障害者アートの理解促進に取り組む。会場となる伊藤忠青山アートスクエアは、伊藤忠商事が社会貢献活動の一環として運営しており、アートを通して様々な社会課題の啓発を行ってきた。

東京都教育庁指導部特別支援教育指導課長の伏見明氏は、「子どもたちの内面の世界を感じてほしい」と言う。「言葉で表現できない子どもが多いため、特別支援学校の美術教育には内面を発信することが求められている。教科書通りに絵を描くことを指導するのではなく、思いのままに創作できるようにすることが大切」。

伏見氏が「内面の世界」と強調したように、展示している作品はどれも、創った児童・生徒の個性や独自の視点が表れている。例えば、視覚障害のある生徒は「鈴鳴り帽子(かぶってみてね)」を製作した。帽子に複数の鈴が付いているのは、日常生活で音を頼りに暮らしているから。


被りながら歩くと鈴の音が響く

聴覚障害がある生徒の作品は、「キラキラ山にある 千年に一度しか見られないキラン花」というタイトルで、絵を描いた。絵具で描いた作品には、光る星形の紙が散りばめられている。


作品に散りばめられた無数の星

東京藝術大学美術学部の本郷寛教授は、「障害を抜きにして、一つの美術作品として観覧者を引き込ませる力がある」と感想を話す。本郷教授は、美術を通じて障害者への理解促進を図るため、「人がつながることが重要」と力を込める。

この展覧会では、都心の会場を伊藤忠商事が無償で提供、協力した東京藝術大学美術学部の教授や学生、また外部のプロである技術スタッフらが展示作品の額や台を作った。専門家の視点で見せ方を工夫したことで、「作品の良さを引き立てている。都、大学などの各分野の専門家が集まり美術展をつくることで、社会の中に障害者アートが文化として浸透していく」(本郷教授)。


額縁や台は東京藝術大学美術学部の学生やプロの職人がつくった

伊藤忠青山アートスクエアは「ねむの木のこどもたちとまり子美術展」が同ギャラリーの最初の展覧会であったことに象徴されるように、障害者アートの理解促進へかねてより力を入れている。この展覧会の次も、一般社団法人Get in touchと共にマイノリティ領域への啓発を行う「MAZEKOZE Art展」(3月11日~4月5日)を3年連続で開催する。

伊藤忠商事は伊藤忠青山アートスクエアを基盤に、さまざまなセクターと組み、アートを通して啓発活動を行っている。社会問題に意識が高くない人でもアートを鑑賞することで、障害者らへの見方が変わっていくことが期待される。

来場者数だけでなく、人の意識を変えた側面でも価値が測れ、このギャラリー設立の意義は大きい。

【東京都立特別支援学校 アートプロジェクト展 私の色、私の形、私の輝き】
会期:2月20日(月)~3月6日(月)11:00~19:00  会期中無休
会場:伊藤忠青山アートスクエア(東京・港)
入場料:無料

提携企業:オルタナ http://alternas.jp/joy/date/68404 2017年2月21日掲載

https://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/040502.jpghttps://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/040502-150x150.jpghatarakubaオルタナ提携記事若者Vioce伊藤忠商事が運営する社会貢献型ギャラリー「伊藤忠青山アートスクエア」で、都立特別支援学校と組んだ展覧会を行っている。都内の44校から830点が集まり、その中から50点を展示している。障害者アートの担い手が作品を通して訴える内面の世界を感じてほしい。(オルタナS副編集長=池田 真隆) 会場には選ばれた50点が飾られている 伊藤忠青山アートスクエアで開かれているのは、「第2回 東京都立特別支援学校 アートプロジェクト展 私の色、私の形、私の輝き」。東京都教育委員会と組み、都立特別支援学校に在籍する児童・生徒から作品を応募した。応募総数は昨年の約2倍となる830点に及んだ。東京藝術大学美術学部が審査を行い、50点を展示した。 このアート作品を通して、障害者及び障害者アートの理解促進に取り組む。会場となる伊藤忠青山アートスクエアは、伊藤忠商事が社会貢献活動の一環として運営しており、アートを通して様々な社会課題の啓発を行ってきた。 東京都教育庁指導部特別支援教育指導課長の伏見明氏は、「子どもたちの内面の世界を感じてほしい」と言う。「言葉で表現できない子どもが多いため、特別支援学校の美術教育には内面を発信することが求められている。教科書通りに絵を描くことを指導するのではなく、思いのままに創作できるようにすることが大切」。 伏見氏が「内面の世界」と強調したように、展示している作品はどれも、創った児童・生徒の個性や独自の視点が表れている。例えば、視覚障害のある生徒は「鈴鳴り帽子(かぶってみてね)」を製作した。帽子に複数の鈴が付いているのは、日常生活で音を頼りに暮らしているから。 被りながら歩くと鈴の音が響く 聴覚障害がある生徒の作品は、「キラキラ山にある 千年に一度しか見られないキラン花」というタイトルで、絵を描いた。絵具で描いた作品には、光る星形の紙が散りばめられている。 作品に散りばめられた無数の星 東京藝術大学美術学部の本郷寛教授は、「障害を抜きにして、一つの美術作品として観覧者を引き込ませる力がある」と感想を話す。本郷教授は、美術を通じて障害者への理解促進を図るため、「人がつながることが重要」と力を込める。 この展覧会では、都心の会場を伊藤忠商事が無償で提供、協力した東京藝術大学美術学部の教授や学生、また外部のプロである技術スタッフらが展示作品の額や台を作った。専門家の視点で見せ方を工夫したことで、「作品の良さを引き立てている。都、大学などの各分野の専門家が集まり美術展をつくることで、社会の中に障害者アートが文化として浸透していく」(本郷教授)。 額縁や台は東京藝術大学美術学部の学生やプロの職人がつくった 伊藤忠青山アートスクエアは「ねむの木のこどもたちとまり子美術展」が同ギャラリーの最初の展覧会であったことに象徴されるように、障害者アートの理解促進へかねてより力を入れている。この展覧会の次も、一般社団法人Get in touchと共にマイノリティ領域への啓発を行う「MAZEKOZE Art展」(3月11日~4月5日)を3年連続で開催する。 伊藤忠商事は伊藤忠青山アートスクエアを基盤に、さまざまなセクターと組み、アートを通して啓発活動を行っている。社会問題に意識が高くない人でもアートを鑑賞することで、障害者らへの見方が変わっていくことが期待される。 来場者数だけでなく、人の意識を変えた側面でも価値が測れ、このギャラリー設立の意義は大きい。 【東京都立特別支援学校 アートプロジェクト展 私の色、私の形、私の輝き】 会期:2月20日(月)~3月6日(月)11:00~19:00  会期中無休 会場:伊藤忠青山アートスクエア(東京・港) 入場料:無料 提携企業:オルタナ http://alternas.jp/joy/date/68404 2017年2月21日掲載下町の農と食で地域をつなぐ