先日、「いただきます みそをつくるこどもたち」というドキュメンタリー映画を鑑賞した。舞台は福岡県、高取保育園。0歳から5歳まで約200人の園児たちが在籍している。「知育、体育、徳育の根本に食の教育がある」という、西福江園長の信念のもと、30年以上続く玄米和食を中心とした保育が続けられ、県外からの視察が絶えないという。

食はいのちをつくる
「食育」という概念がなかった時代から独自の試行錯誤を重ね、その食育スタイルは全国に波及していった。ひとつの生命体を丸ごと食べる「一物全体」、土地柄と季節に合った食べ物をとる「身土不二」などの考えを基にした給食の献立は、玄米、味噌汁、納豆が中心。

味噌は園児たちの手作り。自分たちで配膳を済ませると「百回噛めよ」の歌を合唱し、食べ物に感謝して美味しそうに食事を頬張る。園庭や裏山を裸足で駆け回る。これが高取保育園の日常。その中で園長が語る言葉の一つひとつが、観ている私たちの胸に深く染みわたる。

『100回噛んでたべましょう』
高取保育園では、最初の1口めは、リーダーの号令に従ってみんなで100回噛む。そうするとよく噛む癖がつき、その食材の栄養を丸ごと身体取り込むことができるのだそう。そしてよく噛んで食べると自然におしゃべりなどせず、食べることに集中できる。

『空腹は最高の調味料』
こどもは風の子。野山を駆け回るのが本来の自然な姿。目いっぱい運動したこどもたちは食欲旺盛で、給食をほとんど残さない。自然の中を動き回り、自然の恵みを感謝して丸ごといただく。これが高取流の自然とのつきあい方、魂と肉体の育て方である。

『灰がたまったストーブでは、薪は燃えない』
出すことあっての食べること、こどもたちの立派なウンチの源は、納豆やお味噌汁などの発酵食品と玄米、皮ごといただく野菜たちです。おかげで、風邪ひとつひかない、アトピーもない丈夫な身体に育っている。

『昔はアトピーもアレルギーもなかった』
戦後流入した洋食により日本人の食が大きく変わり、今では日本人にとって和食は、数ある選択肢の中のひとつにすぎなくなってしまった。しかし、本来、日本人の消化器官は野菜や米を消化しやすく、肉や乳製品、小麦を消化するのは得意ではない。日本人の遺伝子は何百年もの間、和食に適した構造をしているのだ。

玄米はスーパーフード
巷では、チアシード、タイガ-ナッツ、マキベリー・・・など、海外産のいわゆるスーパーフードが流行している。近頃の日本人は海外のものばかりに目を向けがちだが、日本にだってとても優秀なバランス健康食、スーパーフードがある。

玄米はまさにその代表選手。ぬか層と胚芽を含むため食物繊維や葉酸、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルやビタミンEやB群が豊富に含まれている。これらの栄養素には、新陳代謝やエネルギー生成力が高まる、ホルモン分泌を促す、神経を穏やかに保つなどの働きがあるので、心身の健やかな成長に大きく貢献できるのだ。独特の歯ごたえは、よく噛むことを促し、脳とともに臓器の働きを活発にしてくれる。

本物の味噌
和食は、ユネスコ文化遺産に登録され、自然を尊ぶ精神性、栄養バランスなどが高い評価を得ている。本作品では、昔からふつうの家庭で毎日つくり続けられてきた和食の大切さを描いている。最新科学の分野でも、疾病に対する味噌の潜在的な効能が解明されつつある。大量生産の味噌と異なり、加熱処理をしない生きた発酵食品“手作り味噌”は、最も古く最も新しい、“未来の健康食”なのかもしれない。

高取保育園では、年長のひまわり組の園児たちが月に一度、全員分の味噌を作る習わしだ。年度の最後である3月には次の年長さん達に味噌の作り方を伝える「味噌伝達式」が行われる。「どんなお味噌を作りたい?→美味しいお味噌!」「じゃあ、どうしたら美味しいお味噌ができる?→作る時しゃべらない!心をこめる!」

・・・園長先生と園児たちの会話に、ぐっときた。「心をこめること」を知っているこどもたち。大人も襟を正さなければいけないと感じる。

季節を感じて生きるこどもたち
『昔のこどもたちはみんな、高取保育園のこどもたちのような顔をしていた・・・』 一緒に作品を鑑賞した年配の方が、こんなことを言っていた。確かに映し出されるこどもたちの顔は、目がキラキラしていて表情が豊かであった。

運動会では、サムライのような凛々しい表情で身体全部を使って動き回る。名物「棒のぼり」も、毎日の運動の成果で、どの子も立派に登り切る。こどもたちは、一年中、半袖、半ズボン、裸足で過ごしている。便利な家電に頼らずに、薄着で外界の変化を感じる生活をしていると、暑さ、寒さに強いこどもになるのだ。高取保育園は、食事だけではなく、こどもたちの体幹づくりにも昔ながらの知恵が活かされている。

「食べることは、生きること」「食べたものがわたし自身になる」そんなことをストレートに伝えてくれた高取保育園のこどもたちと西園長。子育て中の母親、保育・教育に携わる全ての大人に観てもらいたい秀逸な作品である。

「いただきます みそをつくるこどもたち」
http://itadakimasu-miso.jp/

照井 敬子
NPO法人Liko-net 理事長
一般社団法人ソーシャルユニバーシティ総合研究所主席研究員を併任。日本大学理工学部卒業。「健康」を人、社会、地球という領域で捉え、これらが繋がってこそ人は健康に生きることができる、との考えのもと、イベント、セミナー企画運営、執筆活動等を行う。

提携企業:オルタナ 2017年2月9日掲載 http://www.alterna.co.jp/20372

https://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/07/al_020903.jpghttps://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/07/al_020903-150x150.jpghatarakubaオルタナライフ×ワークスタイル提携記事先日、「いただきます みそをつくるこどもたち」というドキュメンタリー映画を鑑賞した。舞台は福岡県、高取保育園。0歳から5歳まで約200人の園児たちが在籍している。「知育、体育、徳育の根本に食の教育がある」という、西福江園長の信念のもと、30年以上続く玄米和食を中心とした保育が続けられ、県外からの視察が絶えないという。 食はいのちをつくる 「食育」という概念がなかった時代から独自の試行錯誤を重ね、その食育スタイルは全国に波及していった。ひとつの生命体を丸ごと食べる「一物全体」、土地柄と季節に合った食べ物をとる「身土不二」などの考えを基にした給食の献立は、玄米、味噌汁、納豆が中心。 味噌は園児たちの手作り。自分たちで配膳を済ませると「百回噛めよ」の歌を合唱し、食べ物に感謝して美味しそうに食事を頬張る。園庭や裏山を裸足で駆け回る。これが高取保育園の日常。その中で園長が語る言葉の一つひとつが、観ている私たちの胸に深く染みわたる。 『100回噛んでたべましょう』 高取保育園では、最初の1口めは、リーダーの号令に従ってみんなで100回噛む。そうするとよく噛む癖がつき、その食材の栄養を丸ごと身体取り込むことができるのだそう。そしてよく噛んで食べると自然におしゃべりなどせず、食べることに集中できる。 『空腹は最高の調味料』 こどもは風の子。野山を駆け回るのが本来の自然な姿。目いっぱい運動したこどもたちは食欲旺盛で、給食をほとんど残さない。自然の中を動き回り、自然の恵みを感謝して丸ごといただく。これが高取流の自然とのつきあい方、魂と肉体の育て方である。 『灰がたまったストーブでは、薪は燃えない』 出すことあっての食べること、こどもたちの立派なウンチの源は、納豆やお味噌汁などの発酵食品と玄米、皮ごといただく野菜たちです。おかげで、風邪ひとつひかない、アトピーもない丈夫な身体に育っている。 『昔はアトピーもアレルギーもなかった』 戦後流入した洋食により日本人の食が大きく変わり、今では日本人にとって和食は、数ある選択肢の中のひとつにすぎなくなってしまった。しかし、本来、日本人の消化器官は野菜や米を消化しやすく、肉や乳製品、小麦を消化するのは得意ではない。日本人の遺伝子は何百年もの間、和食に適した構造をしているのだ。 玄米はスーパーフード 巷では、チアシード、タイガ-ナッツ、マキベリー・・・など、海外産のいわゆるスーパーフードが流行している。近頃の日本人は海外のものばかりに目を向けがちだが、日本にだってとても優秀なバランス健康食、スーパーフードがある。 玄米はまさにその代表選手。ぬか層と胚芽を含むため食物繊維や葉酸、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルやビタミンEやB群が豊富に含まれている。これらの栄養素には、新陳代謝やエネルギー生成力が高まる、ホルモン分泌を促す、神経を穏やかに保つなどの働きがあるので、心身の健やかな成長に大きく貢献できるのだ。独特の歯ごたえは、よく噛むことを促し、脳とともに臓器の働きを活発にしてくれる。 本物の味噌 和食は、ユネスコ文化遺産に登録され、自然を尊ぶ精神性、栄養バランスなどが高い評価を得ている。本作品では、昔からふつうの家庭で毎日つくり続けられてきた和食の大切さを描いている。最新科学の分野でも、疾病に対する味噌の潜在的な効能が解明されつつある。大量生産の味噌と異なり、加熱処理をしない生きた発酵食品“手作り味噌”は、最も古く最も新しい、“未来の健康食”なのかもしれない。 高取保育園では、年長のひまわり組の園児たちが月に一度、全員分の味噌を作る習わしだ。年度の最後である3月には次の年長さん達に味噌の作り方を伝える「味噌伝達式」が行われる。「どんなお味噌を作りたい?→美味しいお味噌!」「じゃあ、どうしたら美味しいお味噌ができる?→作る時しゃべらない!心をこめる!」 ・・・園長先生と園児たちの会話に、ぐっときた。「心をこめること」を知っているこどもたち。大人も襟を正さなければいけないと感じる。 季節を感じて生きるこどもたち 『昔のこどもたちはみんな、高取保育園のこどもたちのような顔をしていた・・・』 一緒に作品を鑑賞した年配の方が、こんなことを言っていた。確かに映し出されるこどもたちの顔は、目がキラキラしていて表情が豊かであった。 運動会では、サムライのような凛々しい表情で身体全部を使って動き回る。名物「棒のぼり」も、毎日の運動の成果で、どの子も立派に登り切る。こどもたちは、一年中、半袖、半ズボン、裸足で過ごしている。便利な家電に頼らずに、薄着で外界の変化を感じる生活をしていると、暑さ、寒さに強いこどもになるのだ。高取保育園は、食事だけではなく、こどもたちの体幹づくりにも昔ながらの知恵が活かされている。 「食べることは、生きること」「食べたものがわたし自身になる」そんなことをストレートに伝えてくれた高取保育園のこどもたちと西園長。子育て中の母親、保育・教育に携わる全ての大人に観てもらいたい秀逸な作品である。 「いただきます みそをつくるこどもたち」 http://itadakimasu-miso.jp/ 照井 敬子 NPO法人Liko-net 理事長 一般社団法人ソーシャルユニバーシティ総合研究所主席研究員を併任。日本大学理工学部卒業。「健康」を人、社会、地球という領域で捉え、これらが繋がってこそ人は健康に生きることができる、との考えのもと、イベント、セミナー企画運営、執筆活動等を行う。 提携企業:オルタナ 2017年2月9日掲載 http://www.alterna.co.jp/20372「農」と「食」を通したソーシャルデザインの実現