5月11日、一般社団法人CSR経営者フォーラム、株式会社オルタナ、有限会社人事・労務は「未来に選ばれる会社シリーズ・ワークショップ」を開催しました。
このシリーズでは、顧客だけでなく、従業員や地域、社会に支持され、「21世紀を力強く生き残る企業とは何か」を探ります。参加者の多くは、長くCSV経営に取り組む時代を先行く企業の経営陣・人事ご担当者の方々です。彼らと講師とを交え、10年後30年後に社員に、地域に、そして社会に愛される企業の「在り方」について考えました。

第1回のテーマは「『コーオウンド・ビジネス』が会社を強くする」です。講師に、日本における「コーオウンド・ビジネス」研究・普及の先駆けとしてご活躍される細川あつし氏(一般社団法人従業員所有事業協会・代表理事、社会デザイン学博士)を招き、「未来に選ばれる会社」についてご講話頂きました。

さて、「コーオウンド・ビジネス」とはそもそもなんでしょうか。あまり見聞きしない用語かと思いますが、簡潔に表現すれば「従業員が所有する会社」ということになります。すなわち、「co-owned」(分かち合う、とも表現できましょうか)。
「コーオウンド・ビジネス」とは、従業員が会社の株主となり、「株式価値の極大化=従業員の幸福の極大化」の構図を設計することにより、「幸せな資本主義」を生み出すことを指します。細川先生は、会社の儲けが適正に従業員に還元され、「従業員が幸せになること」がなにより重要だと言います。コーオウンドの先駆け、イギリスの百貨店大手である「ジョン・ルイス」、アメリカの「サウスウェスト航空」の経営理念は共通して「社員が幸せになること」です。
「コーオウンド」の下では、従業員は「自分がこんなに大切にされているのだから!」と「自分は会社のために何ができるのか」と考え「自分たちの会社だから!」と自発的に仕事に励みます。そのモチベーションがあるからこそ、会社ではイノベーションが起こり続け、成果を上げ続けます。

そして、次第に会社の「在り様」が地域社会に共感され、お客様「が」尊敬する企業として社会に認められます。その結果として、持続性が高く、それぞれ独自の組織風土(オーナーシップ・カルチャー)を持ち、地域社会に共感される不況に強い持続可能な会社経営を生み出すのです。

細川先生の講話の後、後半は、同講義での感想や疑問についてセミナー受講者間、また講師陣と議論をするワークショップを行いました。その中で疑問として挙げられた、日本における「コーオウンド・ビジネスの導入」の可能性について、細川先生は、日本の法制上は「コーオウンド・ビジネス」の実践に何ら障害はない、と言います。アメリカやイギリスでは、企業のGDPの10%をコーオウンド・ビジネスで成り立たせようと、政府自体がコーオウンド企業に対して税の優遇を行ったりと、普及・浸透を図っていますが、「『先駆け』は法律が政府がということは気にしていない」、とのことです。
「エネルギーのある人がその取り組みを始め、『どうやら儲かっているらしいぞ』とほかの人が真似し普及する、政府がついてくるのはそのあとだ、というのはイギリスやアメリカの先例が言っている」、と。
つまり、「コーオウンド」の意義を理解し意思をもって取り組めば、日本のどの地域でも、どの業種でも、このビジネスは成立するとのことです。
受講生の中には、「強い意志をもって取組みを始めれば政府が後からついてくる」と太鼓判を押す細川先生の話に大きくうなずく方もいらっしゃいました。
「未来に選ばれる企業」になるため、あるべき経営とは何か、またどういう意気や視点を持ち、実践していくべきか、思うところがあったのだろうと、次世代を切り開く人たちの意志力を感じました。
そして最後に、矢萩大輔(有限会社人事労務代表取締役)が受講生の「コーオウンドに踏み切ったきっかけとは何か」という質問に答える形で次回内容の紹介をさせていただきました。大きなテーマとして「未来に選ばれる企業」になるためには、「持続可能な経営」を考えることが必要である、と強く主張しました。

企業はみな経営がある程度続いたタイミングで「持続可能な経営をいかに実現するか」を考えます。多くは事業承継の段階で、同族承継しようにも後継者の適正不足で他者承継を選び、その際に企業文化(オーナーシップ・カルチャー)を守るために「コーオウンド」という選択肢を選び、企業の在り様を生み出していく。
それも「持続可能な経営」のための一つの手立てでしょう。

また、「コーオウンドにおける経営の好循環を生み出すタイミングとはなにか」という質問を受けて、「持続可能な経営を実現する」ためにこれからの時代は、ガバナンスとマネジメント両面から、すなわちいかに「組織」が「イノベーションを起こし、普及させていくか」を考える必要がある、とも答えさせていただきました。


この点、次回内容の「ホラクラシー経営」では、持続可能な経営を実現するため、いかに「組織」がイノベーションを起こし続けていくかという視点で講演、ワークショップを開催いたします。組織運営とイノベーションの喚起・普及の源を一つにする組織の土壌として、自律分散型組織の在り様、それと同時に企業がいかに自社のマインドシェアを高め自分が一番の分野を作るかを皆さんと考えていきます。

「ホラクラシー」を取り入れているCSVの分野で活躍する人たちは「キャズム理論」の実践者でもあります。「顧客のマインドシェアをいかに高めるか」つまり、マーケティング手法として新しい市場を探るのではなく、既に波紋(顧客の反応)が立っている池に岩を投げ込みより大きな波紋(さらなる市場の獲得)を生み出します。彼らはその点、「影響力の高さ」を重視して経営戦略を練り、イノベーションから高い経営効果生み出しています。実践者たちが選んだ組織の在り様の多くは「ホラクラシー型(自律分散型)」の組織です。
顧客のマインドシェアが高まり自分が一番の分野が出来てくれば、働き手は自然と仕事の内容ではなく、仕事の「意味(「コーオウンドにおける「会社のために何ができるのか」)」を考えるようになります。
そして、価値観の共有を通してオーナーシップカルチャーの醸成・浸透が実現し、今回紹介した「コーオウンド・ビジネス」の成功にもつながる、と考えます。

 

今回コーオウンド化に可能性を感じて頂いた方や自律分散型組織に興味をお持ちになった方、「持続可能な経営のカタチ」を描いていくプロセスにある組織のリーダーの皆さんには、次回講義は大変興味深い内容になるかと思います。

次回開催は、7月27日(木)午後4時~7時です。改めまして、次回のテーマは「『ホラクラシー経営』の可能性」です。
企業構造に根差す組織風土に関する会社の在り様について、「実践する経営者」として講師に武井浩三氏(ダイヤモンドメディア株式会社代表取締役)をお招きして講義をしていただきます。武井社長とのトークセッションもこうご期待ください。

https://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/オルタナセミナー 第1回 画像 3-1024x768.jpghttps://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/オルタナセミナー 第1回 画像 3-150x150.jpghatarakubaイベント・メディア情報一覧はたらくをデザインする5月11日、一般社団法人CSR経営者フォーラム、株式会社オルタナ、有限会社人事・労務は「未来に選ばれる会社シリーズ・ワークショップ」を開催しました。 このシリーズでは、顧客だけでなく、従業員や地域、社会に支持され、「21世紀を力強く生き残る企業とは何か」を探ります。参加者の多くは、長くCSV経営に取り組む時代を先行く企業の経営陣・人事ご担当者の方々です。彼らと講師とを交え、10年後30年後に社員に、地域に、そして社会に愛される企業の「在り方」について考えました。 第1回のテーマは「『コーオウンド・ビジネス』が会社を強くする」です。講師に、日本における「コーオウンド・ビジネス」研究・普及の先駆けとしてご活躍される細川あつし氏(一般社団法人従業員所有事業協会・代表理事、社会デザイン学博士)を招き、「未来に選ばれる会社」についてご講話頂きました。 さて、「コーオウンド・ビジネス」とはそもそもなんでしょうか。あまり見聞きしない用語かと思いますが、簡潔に表現すれば「従業員が所有する会社」ということになります。すなわち、「co-owned」(分かち合う、とも表現できましょうか)。 「コーオウンド・ビジネス」とは、従業員が会社の株主となり、「株式価値の極大化=従業員の幸福の極大化」の構図を設計することにより、「幸せな資本主義」を生み出すことを指します。細川先生は、会社の儲けが適正に従業員に還元され、「従業員が幸せになること」がなにより重要だと言います。コーオウンドの先駆け、イギリスの百貨店大手である「ジョン・ルイス」、アメリカの「サウスウェスト航空」の経営理念は共通して「社員が幸せになること」です。 「コーオウンド」の下では、従業員は「自分がこんなに大切にされているのだから!」と「自分は会社のために何ができるのか」と考え「自分たちの会社だから!」と自発的に仕事に励みます。そのモチベーションがあるからこそ、会社ではイノベーションが起こり続け、成果を上げ続けます。 そして、次第に会社の「在り様」が地域社会に共感され、お客様「が」尊敬する企業として社会に認められます。その結果として、持続性が高く、それぞれ独自の組織風土(オーナーシップ・カルチャー)を持ち、地域社会に共感される不況に強い持続可能な会社経営を生み出すのです。 細川先生の講話の後、後半は、同講義での感想や疑問についてセミナー受講者間、また講師陣と議論をするワークショップを行いました。その中で疑問として挙げられた、日本における「コーオウンド・ビジネスの導入」の可能性について、細川先生は、日本の法制上は「コーオウンド・ビジネス」の実践に何ら障害はない、と言います。アメリカやイギリスでは、企業のGDPの10%をコーオウンド・ビジネスで成り立たせようと、政府自体がコーオウンド企業に対して税の優遇を行ったりと、普及・浸透を図っていますが、「『先駆け』は法律が政府がということは気にしていない」、とのことです。 「エネルギーのある人がその取り組みを始め、『どうやら儲かっているらしいぞ』とほかの人が真似し普及する、政府がついてくるのはそのあとだ、というのはイギリスやアメリカの先例が言っている」、と。 つまり、「コーオウンド」の意義を理解し意思をもって取り組めば、日本のどの地域でも、どの業種でも、このビジネスは成立するとのことです。 受講生の中には、「強い意志をもって取組みを始めれば政府が後からついてくる」と太鼓判を押す細川先生の話に大きくうなずく方もいらっしゃいました。 「未来に選ばれる企業」になるため、あるべき経営とは何か、またどういう意気や視点を持ち、実践していくべきか、思うところがあったのだろうと、次世代を切り開く人たちの意志力を感じました。 そして最後に、矢萩大輔(有限会社人事労務代表取締役)が受講生の「コーオウンドに踏み切ったきっかけとは何か」という質問に答える形で次回内容の紹介をさせていただきました。大きなテーマとして「未来に選ばれる企業」になるためには、「持続可能な経営」を考えることが必要である、と強く主張しました。 企業はみな経営がある程度続いたタイミングで「持続可能な経営をいかに実現するか」を考えます。多くは事業承継の段階で、同族承継しようにも後継者の適正不足で他者承継を選び、その際に企業文化(オーナーシップ・カルチャー)を守るために「コーオウンド」という選択肢を選び、企業の在り様を生み出していく。 それも「持続可能な経営」のための一つの手立てでしょう。 また、「コーオウンドにおける経営の好循環を生み出すタイミングとはなにか」という質問を受けて、「持続可能な経営を実現する」ためにこれからの時代は、ガバナンスとマネジメント両面から、すなわちいかに「組織」が「イノベーションを起こし、普及させていくか」を考える必要がある、とも答えさせていただきました。 この点、次回内容の「ホラクラシー経営」では、持続可能な経営を実現するため、いかに「組織」がイノベーションを起こし続けていくかという視点で講演、ワークショップを開催いたします。組織運営とイノベーションの喚起・普及の源を一つにする組織の土壌として、自律分散型組織の在り様、それと同時に企業がいかに自社のマインドシェアを高め自分が一番の分野を作るかを皆さんと考えていきます。 「ホラクラシー」を取り入れているCSVの分野で活躍する人たちは「キャズム理論」の実践者でもあります。「顧客のマインドシェアをいかに高めるか」つまり、マーケティング手法として新しい市場を探るのではなく、既に波紋(顧客の反応)が立っている池に岩を投げ込みより大きな波紋(さらなる市場の獲得)を生み出します。彼らはその点、「影響力の高さ」を重視して経営戦略を練り、イノベーションから高い経営効果生み出しています。実践者たちが選んだ組織の在り様の多くは「ホラクラシー型(自律分散型)」の組織です。 顧客のマインドシェアが高まり自分が一番の分野が出来てくれば、働き手は自然と仕事の内容ではなく、仕事の「意味(「コーオウンドにおける「会社のために何ができるのか」)」を考えるようになります。 そして、価値観の共有を通してオーナーシップカルチャーの醸成・浸透が実現し、今回紹介した「コーオウンド・ビジネス」の成功にもつながる、と考えます。   今回コーオウンド化に可能性を感じて頂いた方や自律分散型組織に興味をお持ちになった方、「持続可能な経営のカタチ」を描いていくプロセスにある組織のリーダーの皆さんには、次回講義は大変興味深い内容になるかと思います。 次回開催は、7月27日(木)午後4時~7時です。改めまして、次回のテーマは「『ホラクラシー経営』の可能性」です。 企業構造に根差す組織風土に関する会社の在り様について、「実践する経営者」として講師に武井浩三氏(ダイヤモンドメディア株式会社代表取締役)をお招きして講義をしていただきます。武井社長とのトークセッションもこうご期待ください。下町の農と食で地域をつなぐ