「40年後も心に残る新入社員研修」二日目。「越境人材体感合宿プログラム」のワークショップが、埼玉県春日部市にある「おづつみ園」を舞台に行われた。「非日常の場でのなれない顔ぶれ」とのかかわり方にも幾分か慣れたような不思議な感覚、一日目のワークや交流を経て、奇妙な一体感・連帯感を持ちつつ、二日目も怒涛のように「学び」の場が提供された。

越境人材体感合宿プログラムの様子▼

”しごと“を生み出すためには社会に起こっている出来事からテーマを見つけ、自分がどのような価値を提供できるか考えることが必要である。

テーマを定める前提として、「問題抽出力」と「課題設定力」の違いを学んだ。講師の瀬戸山(有限会社人事労務 コンサルタント)曰くサッカーで例えると「パスがつながらない」「決定力がない」と感じるのは「問題抽出力」、「それは、選手の育成が上手く行っていないからだ」とするのが「課題設定力」だという。

社会に起こっている「問題」は事象として認識しやすく、そこから問題点を抽出するのは比較的容易い。しかし、そこからすぐに“しごと”を生み出せるか。大切なのは抽出した問題点から課題を見出す「課題設定力」だという。そこを起点にして初めて“しごと”を生み出すことができる。

また、この合宿ではもう一つ「学び」の視点として重要なものがあった。それは、「未来思考」だ。ビジネスプラン然り、個人のキャリア然り。常に「未来」を見据えた「ものの見方」をもってワークに取り組む。新人研修ながら、管理職登用試験にも匹敵するワーク内容に研修参加者一同も困惑するような課題設定がなされた。

私たちはこの日、一日を通して二つの班に分かれワークを行うこととなった。「問題」は「未来の春日部を舞台に、『おづつみ園』はどのような価値を生み出しているか」である。

二日目午前中からのワーク第1弾は「プロトタイプ作り」。「テーマ」を決め、「コンセプト」を定め、「コンテクスト」を練り、「コンテンツ」を創作する。

そんなプロトタイプのテーマとして、「2030年の春日部には、多くの外国人がいる、そんななかでおづつみ園は地域にどのような価値を提供するか」が与えられた。その「テーマ」から自分たちが考える「コンセプト」を一つの「コンテンツ」として「料理(昼食)」として表現しよう、というワークに取り組むことになった。

慣れないものの見方、そして、「コンセプトを料理として表現する」という課題に二班ともワーク開始直後は正直しどろもどろしていた。しかし、課題に対するヒントは一日目の浅草の行動観察からすでに与えられていた。その点に気づいた各班は、それぞれ行動を開始し、おづつみ園近くの道の駅「四季の里うちまき」に向かって歩き出した。一日目のワークから学んだ、それぞれの「知識」あるいは「価値観」を「行動特性」としてあらわすことを実践していく。限られた時間の中で、各々がアイディアを出し合って、「春日部の未来」や「その未来に在って何をするべきか」を描いていく。

出来上がりを向かえ、それぞれお互いの班の「料理」の出来に驚きの色を隠せない。各々の班で自分たちが作った料理の「コンセプト」を発表し合った。

驚くべきことに、各班ともに「未来の春日部と来訪した外国人との協調」をコンセプトの一つとしていた。しかし、出来上がったのは「リゾット」と「肉じゃが」である。日本の文化を伝える、「春日部」とそれにかかわる、あるいは暮らしをともにする「外国人」についての微妙な「価値観」の相違が和風と洋風という真逆の「コンテンツ」を生み出した。お互いの「コンテンツ」の違いにも驚きを感じながらも、互いの料理を褒め合い、改めてこの合宿に集まった仲間たちが、会社という垣根を越えて集まったそれぞれの背景や考え方を持つ新入社員なのだと再認識した。

さて、「プロトタイプ作り」でお腹を満たした後には引き続き、午後のワークが開かれる。

「シナリオプランニング」。問題は「プロトタイプ作り」からさらに未来へ広がり「2050年の春日部に向けて2020年の春日部、あるいは『おづつみ園』は何をすべきか」である。一枚のシートに「顧客価値」「利益」「プロセス」、それに対するそれぞれの「Who」「What」「How」を掛けた9マスのフレームワークを行った。

各班には2050年に向けた活動「シナリオ」を描くため2100年までの世界に何が起こっているかを予想した「未来年表」が配られた。その「未来年表」からそれぞれ気になるトピックスを出し合い、共有した事実認識のもとワークに取り組んでいく。

午前の「料理」のワークと異なり、2050年の春日部の在り方そのものから状況設定が異なってきた。一方では、今の春日部の在り方を維持しつつ、外国人との触れ合いを持てる姿をもう一方の班では、世界全土から日本を求めてくる外国人に開かれた春日部を。それぞれ「浅草→春日部のゲストハウスの往来サービス」「春日部に地域を巻き込んだ複合施設を建て現地空港から春日部まで自動運転で結びつく」ビジネスプランを立案した。新入社員研修のワークでありながらも、2050年、自分たちがあるいは定年に向けて「しごと」の「在り様」というのを考える頃のことを想像しながらのワーク。「未来年表」を眺めながら、あるいは未来には本当に今自分たちが考えたことが実現するかもしれない、と心躍らせる思いでワークを終えた。

そして、午前午後のワークを終え、新人研修も佳境を迎えた。

ワークの中で都度登場してきたGATE手帳の「3つの言葉」。まとめのワークでは、自分が仕事のあるいは人生の上で大事にしていきたい自分自身の「3つの言葉」を作成し、「22人目の実践者」としてメンバーの前でその言葉を発表した。

講師の一人である金野(有限会社人事労務 チーフコンサルタント)自身が示した3つの言葉にもあるように、今回の研修のテーマは「越境」「未来志向」そして「一歩を踏み出す」である。「越境」、通常それぞれの属する企業のなかでは「経営理念」を共有したコミュニティで過ごしている。今回の新人研修では、「経営理念」は違えども、近しいマインドを共有する企業が迎えた新人同士のふれあいが繰り広げられた。「新しいことをする」そのために、マインドの近しい人とのかかわりを大事にする。そのために、ときには会社という「境」を超え、「一歩」を踏み出すこと。知識としてマナーも社会人として大事。しかし、その知識をもって何をするのか、「未来志向」を持った「マインド」、そしてそのマインドを活かす人との「つながり」の大切さを学ぶ2日間。短いながらも一生ものの体験をし、その名の通り、私はこの研修のことを「40年後」も心に残し続けるだろう。

編集 白田ねぎ彦

hatarakubaイベント・メディア情報一覧はたらくをデザインする「40年後も心に残る新入社員研修」二日目。「越境人材体感合宿プログラム」のワークショップが、埼玉県春日部市にある「おづつみ園」を舞台に行われた。「非日常の場でのなれない顔ぶれ」とのかかわり方にも幾分か慣れたような不思議な感覚、一日目のワークや交流を経て、奇妙な一体感・連帯感を持ちつつ、二日目も怒涛のように「学び」の場が提供された。 越境人材体感合宿プログラムの様子▼ ”しごと“を生み出すためには社会に起こっている出来事からテーマを見つけ、自分がどのような価値を提供できるか考えることが必要である。 テーマを定める前提として、「問題抽出力」と「課題設定力」の違いを学んだ。講師の瀬戸山(有限会社人事労務 コンサルタント)曰くサッカーで例えると「パスがつながらない」「決定力がない」と感じるのは「問題抽出力」、「それは、選手の育成が上手く行っていないからだ」とするのが「課題設定力」だという。 社会に起こっている「問題」は事象として認識しやすく、そこから問題点を抽出するのは比較的容易い。しかし、そこからすぐに“しごと”を生み出せるか。大切なのは抽出した問題点から課題を見出す「課題設定力」だという。そこを起点にして初めて“しごと”を生み出すことができる。 また、この合宿ではもう一つ「学び」の視点として重要なものがあった。それは、「未来思考」だ。ビジネスプラン然り、個人のキャリア然り。常に「未来」を見据えた「ものの見方」をもってワークに取り組む。新人研修ながら、管理職登用試験にも匹敵するワーク内容に研修参加者一同も困惑するような課題設定がなされた。 私たちはこの日、一日を通して二つの班に分かれワークを行うこととなった。「問題」は「未来の春日部を舞台に、『おづつみ園』はどのような価値を生み出しているか」である。 二日目午前中からのワーク第1弾は「プロトタイプ作り」。「テーマ」を決め、「コンセプト」を定め、「コンテクスト」を練り、「コンテンツ」を創作する。 そんなプロトタイプのテーマとして、「2030年の春日部には、多くの外国人がいる、そんななかでおづつみ園は地域にどのような価値を提供するか」が与えられた。その「テーマ」から自分たちが考える「コンセプト」を一つの「コンテンツ」として「料理(昼食)」として表現しよう、というワークに取り組むことになった。 慣れないものの見方、そして、「コンセプトを料理として表現する」という課題に二班ともワーク開始直後は正直しどろもどろしていた。しかし、課題に対するヒントは一日目の浅草の行動観察からすでに与えられていた。その点に気づいた各班は、それぞれ行動を開始し、おづつみ園近くの道の駅「四季の里うちまき」に向かって歩き出した。一日目のワークから学んだ、それぞれの「知識」あるいは「価値観」を「行動特性」としてあらわすことを実践していく。限られた時間の中で、各々がアイディアを出し合って、「春日部の未来」や「その未来に在って何をするべきか」を描いていく。 出来上がりを向かえ、それぞれお互いの班の「料理」の出来に驚きの色を隠せない。各々の班で自分たちが作った料理の「コンセプト」を発表し合った。 驚くべきことに、各班ともに「未来の春日部と来訪した外国人との協調」をコンセプトの一つとしていた。しかし、出来上がったのは「リゾット」と「肉じゃが」である。日本の文化を伝える、「春日部」とそれにかかわる、あるいは暮らしをともにする「外国人」についての微妙な「価値観」の相違が和風と洋風という真逆の「コンテンツ」を生み出した。お互いの「コンテンツ」の違いにも驚きを感じながらも、互いの料理を褒め合い、改めてこの合宿に集まった仲間たちが、会社という垣根を越えて集まったそれぞれの背景や考え方を持つ新入社員なのだと再認識した。 さて、「プロトタイプ作り」でお腹を満たした後には引き続き、午後のワークが開かれる。 「シナリオプランニング」。問題は「プロトタイプ作り」からさらに未来へ広がり「2050年の春日部に向けて2020年の春日部、あるいは『おづつみ園』は何をすべきか」である。一枚のシートに「顧客価値」「利益」「プロセス」、それに対するそれぞれの「Who」「What」「How」を掛けた9マスのフレームワークを行った。 各班には2050年に向けた活動「シナリオ」を描くため2100年までの世界に何が起こっているかを予想した「未来年表」が配られた。その「未来年表」からそれぞれ気になるトピックスを出し合い、共有した事実認識のもとワークに取り組んでいく。 午前の「料理」のワークと異なり、2050年の春日部の在り方そのものから状況設定が異なってきた。一方では、今の春日部の在り方を維持しつつ、外国人との触れ合いを持てる姿をもう一方の班では、世界全土から日本を求めてくる外国人に開かれた春日部を。それぞれ「浅草→春日部のゲストハウスの往来サービス」「春日部に地域を巻き込んだ複合施設を建て現地空港から春日部まで自動運転で結びつく」ビジネスプランを立案した。新入社員研修のワークでありながらも、2050年、自分たちがあるいは定年に向けて「しごと」の「在り様」というのを考える頃のことを想像しながらのワーク。「未来年表」を眺めながら、あるいは未来には本当に今自分たちが考えたことが実現するかもしれない、と心躍らせる思いでワークを終えた。 そして、午前午後のワークを終え、新人研修も佳境を迎えた。 ワークの中で都度登場してきたGATE手帳の「3つの言葉」。まとめのワークでは、自分が仕事のあるいは人生の上で大事にしていきたい自分自身の「3つの言葉」を作成し、「22人目の実践者」としてメンバーの前でその言葉を発表した。 講師の一人である金野(有限会社人事労務 チーフコンサルタント)自身が示した3つの言葉にもあるように、今回の研修のテーマは「越境」「未来志向」そして「一歩を踏み出す」である。「越境」、通常それぞれの属する企業のなかでは「経営理念」を共有したコミュニティで過ごしている。今回の新人研修では、「経営理念」は違えども、近しいマインドを共有する企業が迎えた新人同士のふれあいが繰り広げられた。「新しいことをする」そのために、マインドの近しい人とのかかわりを大事にする。そのために、ときには会社という「境」を超え、「一歩」を踏み出すこと。知識としてマナーも社会人として大事。しかし、その知識をもって何をするのか、「未来志向」を持った「マインド」、そしてそのマインドを活かす人との「つながり」の大切さを学ぶ2日間。短いながらも一生ものの体験をし、その名の通り、私はこの研修のことを「40年後」も心に残し続けるだろう。 編集 白田ねぎ彦下町の農と食で地域をつなぐ