昨今、話題に上がる働き方の一つの視点「勤務間インターバル制度」について、今回の記事では取り上げる。勤務間インターバル制度は今期国会の審議を経て、その内容が労働基準法に規定されることとなる。

この点、働き方の視点としてもう一つ取り上げたいものは「健康経営」の視点である。「健康経営」は労働者の健康の保持推進を実行し、労働者の健康と組織の生産性を両立し、相互作用を図るとの戦略モデルを経営戦略的に位置づけたものである。これは、長時間労働に伴う重篤な過労死・過労自殺に端を発し注目を浴びた考え方であるともいえるが、「勤務間インターバル制度」の導入の義務化に伴い、むしろ積極的に戦略として取り入れるべきであり、今後の企業経営には必須の考え方となるだろう。

現状、政府が提言している働き方改革実行計画では、勤務間インターバル制度の導入は努力義務にとどまる。政府の動向としては助成金を出し、企業に導入・浸透を促していく予定だ。

長時間労働は、企業にとって業績や損害として表に出ないリスクとしてメンタルヘルス不調による労働生産性の低下を招く。これは、不調者本人の業務遂行能力の低下だけでなく、仮に不調者の自殺が起きた場合は、職場周囲にモラルの低下、新たなメンタルヘルス不調が発生する可能性もあり、ひいては職場全体の休職率の上昇、利益率の低下等が起こる。

かかる、長時間労働を解消し、慢性的な長時間労働で低下してまった、あるいは低下してしまう可能性がある企業の生産性を上げるための施策として、「勤務間インターバル」制度は注目に値する。「勤務間インターバル」とは、「労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、○時間の継続した休息時間を与える」といった内容の制度である。

この点、労働者の適正な労働時間管理は、長時間労働に対する労基署の監督是正に対するのみではなく、「健康経営」の思想を経営戦略に取り込むために「勤務間インターバル制度」を導入する、その前提として必須の設備といえる。

労働時間の把握は労働時間等の設定改善に関する特別措置法に基づく労働時間管理ガイドライン(平成29年1年20日)によって行うことが必要である。同ガイドラインは、過去の通達(いわゆる4.6通達)の内容を「過労死等ゼロ」緊急対策会議に従い改定したものである。以下、ガイドラインの改定の要点と概要を合わせ、説明する。

同ガイドラインによると、労働時間の把握は原則として以下の2つの方法によるものとされている。

①使用者が、自ら現認(使用者または、労働時間を管理する者が直接始業・終業時間を確認)し、適正に記録すること。

②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

しかし、労働者の自己申告制により労働時間の記録を行うことも例外的に認められており、その際には以下の措置を取ることが必要とされています。

(1)自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

(2)実際に労働時間の管理をする者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

(3)自己申告の時間と、実際の労働時間とが合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間を補正すること。

特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業所内にいた時間のわかるデータと、自己申告した労働時間を照合し、著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

(4)自己申告した労働時間を超えて事業所内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合は、報告が適正に行われているか確認すること。

その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には使用者の指示により業務に従事しているなど、使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱われなければならないこと。

(5)使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと

法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(36協定)により延長できる労働時間数を遵守することは当然であるが、実際にこれらを超えた長時間労働をしているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが慣習的に行われていないかについても確認すること。

以上が、改定の要点と概要である。一読しても労働時間の観念の明確化、労働時間管理の適正化が厳密になされるべきとの要請が見て取れる。これは、前述のとおり長時間労働の健康への影響を危惧しての方向性といえるが、「健康経営」の観点からは、勤務間インターバルの確保を急ぐべきであり、その前提としての適正な労働時間管理、その体制を整備することが必要になる。

「勤務間インターバル制度」の導入につき、前述のとおり、今は制度導入を努力義務にとどめ、制度導入を助成金の交付により奨励している時勢である。「健康経営」は、働き手の健康保持のみならず、企業の生産性向上を図る先進的な経営思考である。将来の労働時間規制にのまれる前に、助成金を活用して「勤務間インターバル制度」の導入を検討してみてはどうだろうか。

  • 職場意識改善助成金 勤務間インターバル導入コースについて
  • 平成29年度の事業について申請を受付→事業実施承認は平成29年4月以降

支給額

→例えばこういった施策に

①外部専門家のコンサルティング(例えば、労働時間について個々の労働者に対する現状の把握、分析、勤務間インターバル制度導入に向けた研修の実施)

②機械装置等購入費→タイムカード及び同カード読み取り機の購入(パソコン・タブレット・スマホなどの汎用性の高い機器は認められない※要するに助成金受給対象事業として実質他目的の設備投資をすることはできないということになる)

③借損料→例えば、スマホのアプリでも助成金下りる可能性がある(例えば、スマホで専ら勤務間インターバル導入のため・労務管理に関するためのソフトの利用料で2月15日までの費用は給付の対象となる可能性がある。)

https://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/1-1.jpghttps://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/05/1-1-150x150.jpghatarakuba最新記事進化する組織昨今、話題に上がる働き方の一つの視点「勤務間インターバル制度」について、今回の記事では取り上げる。勤務間インターバル制度は今期国会の審議を経て、その内容が労働基準法に規定されることとなる。 この点、働き方の視点としてもう一つ取り上げたいものは「健康経営」の視点である。「健康経営」は労働者の健康の保持推進を実行し、労働者の健康と組織の生産性を両立し、相互作用を図るとの戦略モデルを経営戦略的に位置づけたものである。これは、長時間労働に伴う重篤な過労死・過労自殺に端を発し注目を浴びた考え方であるともいえるが、「勤務間インターバル制度」の導入の義務化に伴い、むしろ積極的に戦略として取り入れるべきであり、今後の企業経営には必須の考え方となるだろう。 現状、政府が提言している働き方改革実行計画では、勤務間インターバル制度の導入は努力義務にとどまる。政府の動向としては助成金を出し、企業に導入・浸透を促していく予定だ。 長時間労働は、企業にとって業績や損害として表に出ないリスクとしてメンタルヘルス不調による労働生産性の低下を招く。これは、不調者本人の業務遂行能力の低下だけでなく、仮に不調者の自殺が起きた場合は、職場周囲にモラルの低下、新たなメンタルヘルス不調が発生する可能性もあり、ひいては職場全体の休職率の上昇、利益率の低下等が起こる。 かかる、長時間労働を解消し、慢性的な長時間労働で低下してまった、あるいは低下してしまう可能性がある企業の生産性を上げるための施策として、「勤務間インターバル」制度は注目に値する。「勤務間インターバル」とは、「労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、○時間の継続した休息時間を与える」といった内容の制度である。 この点、労働者の適正な労働時間管理は、長時間労働に対する労基署の監督是正に対するのみではなく、「健康経営」の思想を経営戦略に取り込むために「勤務間インターバル制度」を導入する、その前提として必須の設備といえる。 労働時間の把握は労働時間等の設定改善に関する特別措置法に基づく労働時間管理ガイドライン(平成29年1年20日)によって行うことが必要である。同ガイドラインは、過去の通達(いわゆる4.6通達)の内容を「過労死等ゼロ」緊急対策会議に従い改定したものである。以下、ガイドラインの改定の要点と概要を合わせ、説明する。 同ガイドラインによると、労働時間の把握は原則として以下の2つの方法によるものとされている。 ①使用者が、自ら現認(使用者または、労働時間を管理する者が直接始業・終業時間を確認)し、適正に記録すること。 ②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。 しかし、労働者の自己申告制により労働時間の記録を行うことも例外的に認められており、その際には以下の措置を取ることが必要とされています。 (1)自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。 (2)実際に労働時間の管理をする者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。 (3)自己申告の時間と、実際の労働時間とが合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間を補正すること。 特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業所内にいた時間のわかるデータと、自己申告した労働時間を照合し、著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。 (4)自己申告した労働時間を超えて事業所内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合は、報告が適正に行われているか確認すること。 その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には使用者の指示により業務に従事しているなど、使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱われなければならないこと。 (5)使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと 法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(36協定)により延長できる労働時間数を遵守することは当然であるが、実際にこれらを超えた長時間労働をしているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが慣習的に行われていないかについても確認すること。 以上が、改定の要点と概要である。一読しても労働時間の観念の明確化、労働時間管理の適正化が厳密になされるべきとの要請が見て取れる。これは、前述のとおり長時間労働の健康への影響を危惧しての方向性といえるが、「健康経営」の観点からは、勤務間インターバルの確保を急ぐべきであり、その前提としての適正な労働時間管理、その体制を整備することが必要になる。 「勤務間インターバル制度」の導入につき、前述のとおり、今は制度導入を努力義務にとどめ、制度導入を助成金の交付により奨励している時勢である。「健康経営」は、働き手の健康保持のみならず、企業の生産性向上を図る先進的な経営思考である。将来の労働時間規制にのまれる前に、助成金を活用して「勤務間インターバル制度」の導入を検討してみてはどうだろうか。 職場意識改善助成金 勤務間インターバル導入コースについて 平成29年度の事業について申請を受付→事業実施承認は平成29年4月以降 支給額 →例えばこういった施策に ①外部専門家のコンサルティング(例えば、労働時間について個々の労働者に対する現状の把握、分析、勤務間インターバル制度導入に向けた研修の実施) ②機械装置等購入費→タイムカード及び同カード読み取り機の購入(パソコン・タブレット・スマホなどの汎用性の高い機器は認められない※要するに助成金受給対象事業として実質他目的の設備投資をすることはできないということになる) ③借損料→例えば、スマホのアプリでも助成金下りる可能性がある(例えば、スマホで専ら勤務間インターバル導入のため・労務管理に関するためのソフトの利用料で2月15日までの費用は給付の対象となる可能性がある。)下町の農と食で地域をつなぐ