日本経営士会は10月7日、経営士全国研究会議東京大会「CSR経営から共有価値の創造へ」を東京富士大学(東京・新宿)で開催した。富士ゼロックス元社長でグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の有馬利男代表理事が基調講演を行い、「企業のゴールとは何か。収益は社会課題を解決するガソリンである」と強調した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

経営士全国研究会議は、経営コンサルタント団体である日本経営士会が主催し、経営コンサルタントの指導力の向上と、経営者や地域との情報交換を目的としている。

日本経営士会の鈴木和男・東京支部長は「日本経営士会は創立66周年を迎え、自己革新が必要だと考えた。これからの企業・組織が目指すべき『環境経営』『CSR(企業の社会的責任)経営』『経済と社会課題の解決を両立するCSV(共有価値の創造)』といったテーマで全国研究会議を開催することになった」と挨拶した。

経営士全国研究会議東京大会で基調講演を行ったグローバル
・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの有馬利男代表理事

GCNJの有馬代表理事は、基調講演「国連持続可能な開発目標(SDGs)と我が国・企業の対応」で、SDGsやサステナビリティの潮流について講演した。

国連は2015年9月に「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択。有馬代表理事は「17の目標と169のターゲットから成るSDGsには、企業にできることがたくさん書いてある。アウトサイド・イン(社会起点)の発想で、社会課題を解決するビジネスモデルを構築してほしい」と訴える。

さらに「収益を上げて配することが企当業のゴールなのか。収益はガソリンのようなもの。社会にソリューションを提供し、将来世代に価値提供することが企業の目的である」と強調した。

■「CSVで新たな市場を」

2014年に日本経営士会が主催するビジネス・イノベーション・アワード奨励賞を受賞した印刷会社・弘久社(東京都立川市)は、CSVとして多摩地域で就職ミスマッチの解消を目指す「志プロジェクト」に取り組んでいる。

学生がアポ取り、インタビューを行い、地元企業の会社案内を制作することで、学生は、地元企業について深く知ることができ、企業は大学や学生と緊密な関係を構築することができる。当初は多摩地域の活動だったが、2017年度は全国11地域・15大学に広がった。

同社が開発したキー・コンテンツ「とっておきのワンシーン」は、全国からとっておきのワンシーンを募り、絵本にまとめている。それをかんぽ生命が販促品として弘久社から購入し、かんぽ生命の営業担当が顧客に配布したり、郵便局で無料配布したりしている。この絵本はかんぽ生命と顧客との関係性を深めるきっかけになっているという。弘久社は1部売り上げるごとに1円を日本フィランソロピー協会に寄付する。

平野芳久社長は「中小企業の多くはいま壁にぶちあたっている。難しいかもしれないが、CSVを使ってブルーオーシャンを見つけることができれば」と意気込んだ。

経営士全国研究会議東京大会では、2017年ビジネス・イノベーション・アワードの表彰式も行われた。受賞企業・団体は次の通り(企業・団体名の五十音順)。

◆カンパネ(東京・墨田) 奨励賞
「感謝の心」を持ち、建築設備改修を通じ、社員とその家族が物・心両面で豊かになることを実現する」建築設備企業。感謝することの大切さを「水」を中心とした環境事業であることを意識し、「エコステージ」を取得。また、個人住宅の現場もあるため、企業に不可欠なEQCD+S(セキュリティ、セーフティ)体制を作り上げる。

◆グランコーヨー(横浜市) 働き方奨励賞
経営理念「人こそが強み」の徹底、女性の活躍を求める経営者の思いは強く、WLBや多能工に取り組み、働き方改革を推進。女性従業員には管理職就任を避ける風潮があり、改革は進まなかったが、意識改革と業務改善事項を何度も実施し、日替わりリーダー制の導入などで、チームの一体感が醸成され、業績向上、リクルート効果につながる。

◆ササキ(山梨県韮崎市) 経営革新賞
ワイヤーハーネスの加工企業。「最高品質の提供が顧客への最大のサービス」をモットーに「全社改善活動」を実施。「経営革新部門」を新設し、従業員の日々の気付きから品質向上、不良品削減につなげている。また年間100件あまりの会社見学の受け入れ、そのアンケートからも改善活動を行っている。中小企業のモデル企業としての評価は高い。

◆宣工社(埼玉県所沢市) CSR奨励賞
環境・社会・経済を同時に追求し、企業価値を上げることを根幹に置いたトータルロジスティクス企業。本会のCESやCSR活動と全社での5S活動で、「彩の国指定工場」の認定を受け、福祉施設関係の就労支援の一環として20人強の就労体験の受け入れを実施。社員教育にも力を入れ、戦略的思考と実務能力を養い、新事業にチャレンジしている。

◆トヨダプロダクツ(群馬県桐生市) 優秀開発賞
独自開発の生産管理システムにより、年々進む多品種少ロット、短納期化に対応するためデータの共有化、見える化を推進、サポート体制の強化につながっている。また、環境事業のA&Aを中心に、自社ブランド製品を手掛け、特に「携行用浄水器911型」は日本政府人道支援物資備蓄品になった唯一の浄水器で防衛省から表彰を受けた。

◆動物往診+住宅ケアサービス にくきゅう(埼玉県鶴ヶ島市) ニュービジネス奨励賞
人もペットも高齢化が進む現在、自治体と連携して、動物往診車でオーダーメードの医療サービスを行う新業態を開発。夜間が多い往診には女性獣医師の方が受け入れやすく、女性トリマーやトレーナーなどと連携し、多様なサービスニーズに応える事業構築が期待される。出産などで臨床を離れた「潜在獣医師」の復帰も見込まれる。

◆一般社団法人日本リ・ファッション協会(東京・墨田) 奨励賞
リ・ファッションを生活スタイルの見直し・変化と定義し、循環型社会の実現に向け、「衣」からアプローチを始める。リ・ファッションのRe(リ)にはリスペクトの意味も含ませ、人にも自然にも感謝する日本古来の生き方を継承しつつ、未来を創造する21世紀型の活動を目指している。

◆美鈴環境サービス(滋賀県大津市) CSR優秀賞
地域の事務所や住宅の害虫駆除事業を展開。環境保全の取り組みも始め、日本経営士会CES第1号に登録。地域の困ったことの解決をモットーに不用品、遺品などの整理事業に参入し、地域からの感謝が業績面にも反映。CES導入後売上高は1.6倍に増加。常に顧客対応ができるよう体制化を図り、地域社会とウィンウィンをつくるビジネスを展開している。

◆医療法人横浜柏堤会キラキラ研修会(横浜市) 女性活躍奨励賞
長時間労働が常態化する医療業界で女性事務職員から問題意識が提案され、女性リーダー育成を目的とした研修組織を設立。テーマを「自分に合う働き方を学び職員の勤続年数を伸ばす」とし、現在では男性職員も加わり、医療事務の分野で成果を上げている。

オルタナ 2017年10月9日掲載 http://www.alterna.co.jp/22786

https://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/11/GCNJ有馬代表「収益は社会課題を解決するガソリン」①.jpghttps://hatarakuba.com/wp-content/uploads/2017/11/GCNJ有馬代表「収益は社会課題を解決するガソリン」①-150x150.jpghatarakubaオルタナ提携記事最新記事進化する組織日本経営士会は10月7日、経営士全国研究会議東京大会「CSR経営から共有価値の創造へ」を東京富士大学(東京・新宿)で開催した。富士ゼロックス元社長でグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の有馬利男代表理事が基調講演を行い、「企業のゴールとは何か。収益は社会課題を解決するガソリンである」と強調した。(オルタナ副編集長=吉田広子) 経営士全国研究会議は、経営コンサルタント団体である日本経営士会が主催し、経営コンサルタントの指導力の向上と、経営者や地域との情報交換を目的としている。 日本経営士会の鈴木和男・東京支部長は「日本経営士会は創立66周年を迎え、自己革新が必要だと考えた。これからの企業・組織が目指すべき『環境経営』『CSR(企業の社会的責任)経営』『経済と社会課題の解決を両立するCSV(共有価値の創造)』といったテーマで全国研究会議を開催することになった」と挨拶した。 経営士全国研究会議東京大会で基調講演を行ったグローバル ・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの有馬利男代表理事 GCNJの有馬代表理事は、基調講演「国連持続可能な開発目標(SDGs)と我が国・企業の対応」で、SDGsやサステナビリティの潮流について講演した。 国連は2015年9月に「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択。有馬代表理事は「17の目標と169のターゲットから成るSDGsには、企業にできることがたくさん書いてある。アウトサイド・イン(社会起点)の発想で、社会課題を解決するビジネスモデルを構築してほしい」と訴える。 さらに「収益を上げて配することが企当業のゴールなのか。収益はガソリンのようなもの。社会にソリューションを提供し、将来世代に価値提供することが企業の目的である」と強調した。 ■「CSVで新たな市場を」 2014年に日本経営士会が主催するビジネス・イノベーション・アワード奨励賞を受賞した印刷会社・弘久社(東京都立川市)は、CSVとして多摩地域で就職ミスマッチの解消を目指す「志プロジェクト」に取り組んでいる。 学生がアポ取り、インタビューを行い、地元企業の会社案内を制作することで、学生は、地元企業について深く知ることができ、企業は大学や学生と緊密な関係を構築することができる。当初は多摩地域の活動だったが、2017年度は全国11地域・15大学に広がった。 同社が開発したキー・コンテンツ「とっておきのワンシーン」は、全国からとっておきのワンシーンを募り、絵本にまとめている。それをかんぽ生命が販促品として弘久社から購入し、かんぽ生命の営業担当が顧客に配布したり、郵便局で無料配布したりしている。この絵本はかんぽ生命と顧客との関係性を深めるきっかけになっているという。弘久社は1部売り上げるごとに1円を日本フィランソロピー協会に寄付する。 平野芳久社長は「中小企業の多くはいま壁にぶちあたっている。難しいかもしれないが、CSVを使ってブルーオーシャンを見つけることができれば」と意気込んだ。 経営士全国研究会議東京大会では、2017年ビジネス・イノベーション・アワードの表彰式も行われた。受賞企業・団体は次の通り(企業・団体名の五十音順)。 ◆カンパネ(東京・墨田) 奨励賞 「感謝の心」を持ち、建築設備改修を通じ、社員とその家族が物・心両面で豊かになることを実現する」建築設備企業。感謝することの大切さを「水」を中心とした環境事業であることを意識し、「エコステージ」を取得。また、個人住宅の現場もあるため、企業に不可欠なEQCD+S(セキュリティ、セーフティ)体制を作り上げる。 ◆グランコーヨー(横浜市) 働き方奨励賞 経営理念「人こそが強み」の徹底、女性の活躍を求める経営者の思いは強く、WLBや多能工に取り組み、働き方改革を推進。女性従業員には管理職就任を避ける風潮があり、改革は進まなかったが、意識改革と業務改善事項を何度も実施し、日替わりリーダー制の導入などで、チームの一体感が醸成され、業績向上、リクルート効果につながる。 ◆ササキ(山梨県韮崎市) 経営革新賞 ワイヤーハーネスの加工企業。「最高品質の提供が顧客への最大のサービス」をモットーに「全社改善活動」を実施。「経営革新部門」を新設し、従業員の日々の気付きから品質向上、不良品削減につなげている。また年間100件あまりの会社見学の受け入れ、そのアンケートからも改善活動を行っている。中小企業のモデル企業としての評価は高い。 ◆宣工社(埼玉県所沢市) CSR奨励賞 環境・社会・経済を同時に追求し、企業価値を上げることを根幹に置いたトータルロジスティクス企業。本会のCESやCSR活動と全社での5S活動で、「彩の国指定工場」の認定を受け、福祉施設関係の就労支援の一環として20人強の就労体験の受け入れを実施。社員教育にも力を入れ、戦略的思考と実務能力を養い、新事業にチャレンジしている。 ◆トヨダプロダクツ(群馬県桐生市) 優秀開発賞 独自開発の生産管理システムにより、年々進む多品種少ロット、短納期化に対応するためデータの共有化、見える化を推進、サポート体制の強化につながっている。また、環境事業のA&Aを中心に、自社ブランド製品を手掛け、特に「携行用浄水器911型」は日本政府人道支援物資備蓄品になった唯一の浄水器で防衛省から表彰を受けた。 ◆動物往診+住宅ケアサービス にくきゅう(埼玉県鶴ヶ島市) ニュービジネス奨励賞 人もペットも高齢化が進む現在、自治体と連携して、動物往診車でオーダーメードの医療サービスを行う新業態を開発。夜間が多い往診には女性獣医師の方が受け入れやすく、女性トリマーやトレーナーなどと連携し、多様なサービスニーズに応える事業構築が期待される。出産などで臨床を離れた「潜在獣医師」の復帰も見込まれる。 ◆一般社団法人日本リ・ファッション協会(東京・墨田) 奨励賞 リ・ファッションを生活スタイルの見直し・変化と定義し、循環型社会の実現に向け、「衣」からアプローチを始める。リ・ファッションのRe(リ)にはリスペクトの意味も含ませ、人にも自然にも感謝する日本古来の生き方を継承しつつ、未来を創造する21世紀型の活動を目指している。 ◆美鈴環境サービス(滋賀県大津市) CSR優秀賞 地域の事務所や住宅の害虫駆除事業を展開。環境保全の取り組みも始め、日本経営士会CES第1号に登録。地域の困ったことの解決をモットーに不用品、遺品などの整理事業に参入し、地域からの感謝が業績面にも反映。CES導入後売上高は1.6倍に増加。常に顧客対応ができるよう体制化を図り、地域社会とウィンウィンをつくるビジネスを展開している。 ◆医療法人横浜柏堤会キラキラ研修会(横浜市) 女性活躍奨励賞 長時間労働が常態化する医療業界で女性事務職員から問題意識が提案され、女性リーダー育成を目的とした研修組織を設立。テーマを「自分に合う働き方を学び職員の勤続年数を伸ばす」とし、現在では男性職員も加わり、医療事務の分野で成果を上げている。 オルタナ 2017年10月9日掲載 http://www.alterna.co.jp/22786下町の農と食で地域をつなぐ